











梶原邸の木構造は、生産履歴が明確で木材を一般住宅の木材使用の約3倍を使用し、伝統構法を現代的、科学的に捉えなおした渡り腮(あご)落し込み板壁構法です。平成22年9月1日、東京で「木の家耐震改修推進会議」に参加した私は、阪神淡路大震災で多くの住宅が2度目の揺れで倒壊。15分後、被災した約8割の方々が圧死されたことを知り、倒壊しない家づくりが大事だと思いました。直後に、布田川断層も知り、対応すべく県立大学の北原先生の協力で建築したのが同構法の賃貸住宅、エコ・コミューン山ノ神です。梶原さんは、ここに住んでおられました。 梶原さんから実家に帰ると家づくりの相談を受け、寒い山都町の冬に対応する断熱効果の高いつくりと2世帯ならではの工夫を凝らしました。また、ナチュラルでシンプルな欧風的なデザインと、手作りのキッチンは奥様の要望に応えました。
施主様から一言
実家にUターンするのを機に実家を建て替えました。それまでは、合同会社松下生活研究所が設計した貸家に住んでいましたが、非常に住み心地が良かったため、建て替えも同社にお願いしました。震災の後でしたので、耐震構造のしっかりした家、自然素材にこだわった家が理想でした。初めて来た人は「歩いただけで頑丈さが分かる」「こんなに木をふんだんに使った家は見たことがない」と言ってくれます。今は、土間に据えた薪ストーブの炎をゆっくり眺めながら過ごす毎日です。
「元気で気ままなひとり暮らしの高齢者だけど、将来の不安は少なくしたい」あるいは「忙しい共働きだけど、子供を見守る人が多くいてほしい」「シングルマザーだけど、コミュニティ(大家族)の場にいたい」等それぞれがつかず離れずの空間と時折大家族を味わう場を皆さんで共有します。共同のLDKで皆で食事をしたり、ご年配への食事を提供したり、様々な暮らしを入居者で楽しんで暮らせる場所がここにあります。
私の事務所がある木造の賃貸住宅「エコ・コミューン山ノ神」には6世帯が入居しています。畑もあり「現代版長屋」のような造りが特徴。きっかけは9年前、土地所有者の田上氏から「環境に配慮した小さなマチをつくりたい」と相談を持ち掛けられたことでした。 当時、コミュニティに興味があり、海外の「エコビレッジ」へ視察に出かけていました。エコビレッジとは、環境負荷の少ない暮らしにこだわった人々が集まったコミュニティのこと。当時、農的な暮らしをデザインする「パーマカルチャー」九州の代表として米作りなどを実践しており、この経験を新しいマチづくりに生かすことにしました。
重視したのは、入居者の理念の共有とつながりのある暮らし方です。「賃貸住宅なのに、まるで自分の家を建てるみたいに設計からかかわることができてうれしい」と当時、建築説明会に参加し入居した清水さんは話をしています。計画段階からワークショップの参加者を募り木材産地ツアーをはじめ、生ごみ堆肥のコンポストや米作りなどを実施。土壁塗りにも挑戦してもらい、自分の住まいを作るような共同体験をやってもらいました。そうした取り組みを通じて参加者同士のつながりも深まり、2010年4月の完成以来、食や環境にこだわりながら快適に暮らすコミュニティが形成されています。
「つながり」については、熊本地震でも、コミュニティの大切さが指摘され「孤立した1週間の共同生活が楽しかった」と、ある集落の区長さんが語られました。まさに「つながりのある社会」が実感されます。 人と人をつなぐのは、菜園や田んぼのお米作りの協働作業でも、持ち寄りの食事会でも良いし、一緒になって暮らしを愉しみ味わう場が大切です。
この住宅は、「くまもと型復興住宅」住まいのガイドブックに掲載されているプランを気に入っていただき、建築に至りました。「くまもと型復興住宅」とは、熊本地震後の被災者の恒久的な住まいの確保のために、県内の住宅生産者が力を合わせて被災者の方々の支援ができるように、熊本県地域型復興住宅推進協議会が提案募集を行い完成したガイドブックに掲載されている住宅です。「県内の住宅生産者が力を合わせて」ということで、五木村を支援している五木源住宅復興支援協議会で復興支援チームを立ち上げ、ガイドブックに5チーム6プラン掲載しました。
このプランの特徴は、12坪の小さな住宅ですが、老夫婦がお二人で住むにはとても住みやすい造りとなっております。例えば、トイレ。これは玄関側と寝室側の両方からアクセスできるように工夫しました。このことにより、開口部が広く取れており、介助が必要となった際にも、楽な体制でお手伝いできます。また、室内は、杉板の無垢材の仕上げおよび珪藻土仕上げとしているため調湿効果があり、過ごしやすい空間となっておリます。
創業から30周年を迎えるころ「もっと地域の人たちが気軽に立ち寄ってくれるような不動産屋さんにしていきたい。」というご相談から始まりました。限られた空間の中で何度もスペースの使用の仕方をシミュレーションしたり、珪藻土や無垢を使用して空気感が心地よく温かい雰囲気を作ったり、働く人も訪れる人も笑顔になれるような場所を目指しました。
熊本地震で被災した旧西村民俗資料館の利活用の基本計画を行いました。7月より10回開催したワークショップでは、延べ200人の参加があり、甲佐町の町民のみならず、甲佐高校生、甲佐に移住した方、甲佐町以外の方など多様な視点で活発な意見交換が行われました。まず、旧西村邸の建物診断から始まり、甲佐町の魅力を甲佐内外の人たちで見つめなおす「甲佐町あるもの発見講座」、参加者が輪となりオープンに意見を述べ合う「OST100人ワークショップ」、商店街のにぎわい創出や移住定住をテーマに話し合う「検討ミーティング」など、幅広いテーマでワークショップを開催いたしました。
このワークショップを経て基本コンセプトを見いだす為にコンセプトフレーム、開発テーマとその手法を探り成果目標を決定しました。その成果を実現するためのプログラムやトータルコンセプトを定め、施設活用策、その特徴を検討しました。また、この施設を運営する段階的組織形態の検討から地域との関わりを関係人口論から見いだし、中間支援組織の組織体がどのようにプログラム参加者を巻き込んで行くか、関係性の震度や機能の役割を検討したところです。
被災した旧西村民俗資料館の改修の問題点と地域の交流拠点となるにはどのような方法がベストなのか、改修工事と予算から見いだしたスケジューリングを広報という側面から検討しました。その検討を踏まえ、施設の利用者数と収支計画、費用対効果に係る町づくり人口や関係人口を見込んで成果指標による経済波及効果を検討しました。
屋久島町に関わり10年が経過しました。当初は、世界自然遺産の屋久島がどのような状況なのか、自主調査・研究から入りましたが、製材所や森林組合などの聞き取りによると、多くの木材は島外から購入し、工務店はプレカット建築に移行した結果、5カ所あった製材所は2カ所に減り、森林組合も製材所も力なく衰退の一途でした。林業に未来を感じない様子が伺えました。
その後、森林林業の振興に係る事業を屋久島町から依頼され、地元の大工工務店や製材所などと杉の特性や森林林業を活かす加工体制や流通体制を検討している最中、2013年に新庁舎建設を木造でつくるという決定が下され、「地杉の全面的活用」「地元職人で行う」「庁舎建設を契機とした地域づくり」の路線で庁舎建設が始まりました。
杉は抗菌、抗カビ、鎮静作用、塵ダニの繁殖を抑制する作用がありますが、屋久島の杉は九州や本州の杉より10倍から20倍もあり、甘く重厚な感じがします。また、黒ジンが多く強度もあることが分かってきました。何度も足蹴に通う中、地杉で作られた宿に泊まるうちに割れが非常に少なく、香りが良いのに気が付きました。そして、島の人たちの杉への思い、自然と関わる人の技術、伐採や島の大工たちの腕、癖のある地杉を製材する技術は、屋久島ならではのものです。この特性をどう生かすかが大きな課題です。
当研究所は、庁舎基本構想の策定を行い、住民や関係機関への聞き取りやWSを行いました。また、プロポーザルの選定委員長も担い、現在は庁舎アドバイザーや屋久島の産業構造の改善による地域循環型の島づくりを町ぐるみで目指しているところです。途中、反対運動もありましたが、アルセッド建築研究所(設計監理)と共に、住民への期待に応えるよう努力しています。
私達は、地域づくり計画の策定にあたり、いかにそこで暮らす人、働く人、学ぶ人、関心を持つよそ者も含めた多様な声を反映することが大切だと考えています。そこで、私達はオープン・スペース・テクノロジー(以後、OST)という参加者が議論したい課題を自ら提案し、自主的に話し合いを行うことで当事者意識を最大限に引き出すワークショップ手法を取り入れています。新製品の開発や、疲弊した組織の再生など、多様な人々からなるグループが複雑で対立を生じやすい課題に取り組む場合に効果的と言われ、世界123か国で使われています。高校生でも、主婦でも、特に専門知識のない一般住民が、まちづくりを自分事として真剣に向き合い、公平で安心できる場で意見を交わしていくことは、時間も手間もかかります。しかし、こうした生の声はそこの地域に根差した課題であり、解決策の糸口となってまちづくり計画書の根幹をなしていきます。私たちは皆様の声を拾い、整理し、集約して、深めていくお手伝いをさせていただきます。
天草市河浦地域まちづくり計画書策定業務では、地元の住民の声だけではなく、よそ者の支店を反映したいと、河浦まちづくり協議会よりサポート依頼を受け、住民ワークショップを開催。若い人は高校生から、先生、主婦、シニア層など多様な方々が延べ200人以上が参加し、住民の声を主体とした計画書を策定しました。平成27年より4か年計画がスタート。重要5策のテーマに沿って、住民のワークショップ、薬草講演会、歴史文化のマップ作り、ジビエ料理体験会、しめ縄づくりの会、狩猟女子講演会など自発的に実績を重ねています。住民の方々が自ら考え、企画、運営を小さな取り組みから始めることが、自律したまちづくりへとつながっていく大きなポイントです。私たちは伴走型で、共に悩み、意見を交わし、体験していくことで、長いまちづくりのプロセスをサポートをしていきます。